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神戸地方裁判所 昭和57年(ワ)1414号 判決 1984年6月21日

原告

福岡武

被告

田丸恒彦

主文

一  被告は原告に対し金五三七万三、五二四円及びこれに対する昭和五六年八月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを一〇分し、その一を被告の、その余を原告の負担とする。

四  この判決は原告勝訴部分に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、総額金五、四五五万九、八一九円のうち一部金四、四一〇万四、三三六円およびこれに対する昭和五六年八月一日より支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、次の交通事故により傷害を受けた。

(一) 発生時 昭和五六年八月一日午前五時二五分頃(天候晴)

(二) 発生地 (1) 兵庫県芦屋市呉川町二番一六号

(2) 道路名称 市道

(3) 道路の状況 信号のない交さ点

(三) 事故車、車種 普通乗用自動車 登録番号神戸五八せ六七三二号

(四) 運転者 被告(進行方向 南から北)

(五) 被害者の事情 (1) 自動車(軽四輪貨物)運転

(2) 当時四三歳

(3) 平均余命三二・七二歳

(昭和五五年簡易生命表による。)

(六) 事故の態様 (1) 衝突

(2) その具体的内容

原告は、軽四輪貨物自動車を運転して前記交さ点に差しかかり、一時停止後発進した直後、右方より前記交さ点を北進してきた被告運転の普通乗用車と出合い頭に衝突したものである。

(七) 受けた傷害の内容 右胸部切創、右第六ないし第一二肋骨々折、外傷性血胸

2  帰責事由

被告は次の事由により、本件事故より生じた原告の損害を賠償する責任がある。

(一) 根拠

1 運行者の責任(自動車損害賠償保障法第三条)

2 一般不法行為の責任(民法第七〇九条)

(二) 右に該当する具体的な事実は、次のとおりである。

被告は、前記加害車両を保有し、右車両を運転中、原告に傷害を与えたものである。

(三) 過失の内容

(1) 運転者に次のような過失があつた。

前方不注意、最高(安全)速度違反(四五K/h)(指法定三〇K/h)道交法二二条、七〇条違反

(2) その具体的内容を補足すれば、左のとおりである。

車両等の運転者は、法定制限速度を遵守し、かつ進行方向の前方の安全に注意して運転しなければならない注意義務があるのにかかわらず、被告は右注意義務を怠り、法定制限速度(三〇キロメートル毎時)を少くとも約一五キロメートル超える時速約四五キロメートル以上のスピードで、前方の安全確認不十分のまま漫然進行せしめた過失により、原告運転の車両に衝突し、もつて原告に前記傷害を与えたものである。

3  損害

(一) 療養費

(1) 入院治療費 合計金七〇万九、二〇六円

原告は、本件事故により医療法人昭圭会伊藤病院に入院し治療を受け、その入院治療費は、合計金七〇万九、二〇六円(甲第七号証ないし同第一一号証)である。

(2) 入院雑費

原告は本件交通事故により一二〇日間入院(甲第二号証ないし同第一〇号証)し、その入院雑費は一日金一、〇〇〇円が相当である。

1,000円×120日120,000円

(3) 付添看護費

原告の妻が一六日間付添看護(甲第一二号証)し、その看護費は一日金三、五〇〇円が相当である。

3,500円×16日=56,000円

(4) 通院治療費

原告は退院後、大阪赤十字病院へ通院し、その治療費金三万五、〇八〇円を支払つた(甲第一一号証)。

(二) 得べかりし利益 合計金五、二三三万九、五三六円

(1) 休業損害 金二九九万六、一四九円

原告は牛乳販売業に従事しており、各家庭(以下戸配という)や兵庫県庁(以下県庁という)へ牛乳およびサンドイツチを配達・販売していたが、本件事故前三ケ月(五月ないし七月)の戸配分の荒利合計は金七三万三、〇七七円(甲第一四号証ないし同第一六号証)であり、同様に県庁分の荒利合計は金六四万九、七六一円(甲第一七号証ないし同第一九号証)であり、以上荒利合計は金一三八万二、八三八円となる。よつて原告の本件事故前三ケ月の平均月収は金四六万九四六円となる。

1,382,838円÷3=460,946円

原告は、本件事故による傷害のため、入院四ケ月、自宅療養約二ケ月半の休業を余儀なくされ、その結果金二九九万六、一四九円の休業損害を受けた。

460,946円×6ケ月半=2996,149円

(2) 将来の逸失利益 金四、九三四万三、三八七円

原告は、本件事故により牛乳販売業を廃業せざるを得なくなり、現在一般事務職に従事しているが、その収入は月額金一八万七、六三六円(甲第二〇号証)であり、原告が従前通り牛乳販売業を経営していたら得られるであろう右月収より月額金二七万三、三一〇円の減収損害を受けた。

原告は、本訴提起時四四歳であり、今後二三年間は就労可能であるから、新ホフマン方式に従い算出するとその逸失利益は金四、九三四万三、三八七円となる。

(460,946円-187,636円1月)×12×15,045=49,343,387円 (新ホフマン係数)

(三) 慰藉料 金二〇〇万円

原告は本件事故により前記重傷を負い、入院四ケ月、自宅療養二ケ月半の長期にわたる治療を余儀なくされ、また本件事故によりその生業たる牛乳販売業を廃業し転職を余儀なくされた他、原告の胸部から腰部にかけて自発痛の後遺症になやまされている。

以上の事情を総合すれば、慰藉料額は金二〇〇万円を下らない。

(四) 弁護士費用 金五〇万円

原告は、本訴提起するにつき、訴外富士火災海上保険株式会社と示談交渉したが、右示談交渉は成立せず、止むなく弁護士新谷充則に訴訟委任せざるを得なかつたものであり本件訴訟提起の経緯・事案等を勘案すれば弁護士費用としては金五〇万円が相当である。

(五) 損益相殺

損害合計金五、五七五万九、八一九円のうち富士火災海上保険株式会社より仮払い金として金一二〇万円の支払いを受け、次のとおり充当する。

55,759,819円-1,200,000円=54,559,819円

4 結論

ところで被告は、右損害金の支払いをしないので、右総額金五、四五五万九、八一九円のうち一部金四、四一〇万四、三三六円およびこれに対する不法行為の日である昭和五六年八月一日より支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを各求める。

二  請求原因に対する認否及び被告の主張

1  請求原因1項のうち、(一)、(二)、(三)、(四)、(五)の(1)の各事実は認め、(五)の(2)、(3)、(七)の各事実は不知、その余の事実は否認する。

2  同2項は争う。

3  同3項のうち、(五)の原告が富士火災海上保険株式会社より金一二〇万円の支払を受けたことは認めるが、その余の事実は否認する。

4  同4項は争う。

5  被告の主張

(一) 休業損害期間について

休業期間については、その期間は五ケ月をこえないものである(昭和五八年四月一一日の原告本人調書五丁表)。

(二) 将来の逸失利益について

原告の主張する逸失利益は本件事故と全く相当因果関係がない。

つまり、

(1) 原告は昭和五七年一月以降元の牛乳販売の仕事をしていないのであるが、これは本件事故によつて原告の被むつた後遺障害が等級第一四級一〇号(乙第三号証)という軽微なものである点から、明らかに本件事故によつて被むつた後遺障害のために牛乳販売を止めざるを得なくなつたものでないこと、

(2) また、一般的に考えても、本件のように牛乳販売業を営む者が交通事故によつて入院し、その入院期間中第三者に牛乳販売をしてもらつた場合に、元の牛乳販売業者である原告がそのために―たとえば、右第三者がその営業権を譲り受けることによつて―事故前に有していた営業権を失い牛乳販売を止めざるを得なくなるというようなことは、通常考えられないこと、

(3) さらに、原告の後遺障害は等級第一四級一〇号(乙第三号証)で、軽微であるし、牛乳販売業をなすには特別の資格は不要で、食品衛生上の検査を受け、保健所の許可を得ればよい(証人三原正威の証人調書6丁表裏)のであるから、経験則上、原告が退院後牛乳販売業を営むことも可能であつたこと

等から総合的に考えれば、原告が牛乳販売を止めたことと本件事故との間には相当因果関係はなく、従つて、原告の主張する逸失利益も本件事故と相当因果関係がないことになる。

三  抗弁

1  過失相殺

原告には、本件交差点における一時停止義務違反及び被告運転車両の進行妨害の過失があるから、被告は大幅な過失相殺を主張する。

2  弁済

原告は金一二〇万円の弁済をうけた以外に、治療費として金七〇万九、二〇六円の弁済をうけている。

四  抗弁に対する認否

過失相殺の抗弁は争う。

第三証拠〔略〕

理由

一  請求原因1項のうち、(一)、(二)、(三)、(四)、(五)の(1)の各事実は、当事者間に争いがない。

同1項の(五)の(2)の事実は甲第一号証によつて認めることができる。

二  そこで事故の態様及び帰責事由について検討する。

右争いのない事実に、甲第一ないし第六号証、乙第一、第二号証、原告本人(第一回)及び被告本人尋問の各結果を総合すれば、次の1ないし7の事実を認めることができ、これを覆すに足る証拠はない。

1  本件道路は南北に通ずる幅員約六・五メートルのアスフアルト舗装の市道であり、本件交差点から北方は幅員約一四・二メートルの広い道路になり、その前方約五〇メートルで国道四三号線に通じている。

2  当時路面は乾燥しており、前方の見通しは良く、制限速度は時速三〇キロメートルで、交通量は閑散であつた。

3  被告は友人小林美はるを助手席に乗せ、同女ないし小林実所有の普通乗用自動車(以下被告車という)を、同女の承諾のもとに運転して北進し、本件交差点にさしかゝつた。

4  被告は、早朝で人通りがなかつたこともあり、時速約四〇ないし五〇キロメートルで道路左側部分を走行していたが、本件交差点に進入するに際しては速度を落とすことなく、また、前方は見ていたものの交差点右側に設置されているロードミラーを確認しなかつたため、同交差点西側から本件交差点に進入しようとする原告運転の軽四輪貨物自動車(以下原告車という)の発見が遅れ、これを左前方約一一・三メートルに初めて認めて衝突の危険を感じ、急ぎハンドルを右に切つて衝突を避けようとしたが及ばず、同交差点のほゞ中央付近で被告車の左前部と、原告車の右前部が接触し、被告車はその右前方約九・五メートルの地点まで進行して停止し、原告車は半回転して停止した。

5  一方、原告は、東進して同交差点を通過しようとしていたが、原告の走行していた道路は幅員約四・九メートル(路側帯二・〇五メートルを含む)の一方通行(西行禁止)の道路であり、かつ同交差点手前には一時停止の標識と停止線が設けられていた。

6  原告は牛乳配達のため原告車を運転して本件交差点にさしかかり、同交差点手前で徐行し前方右のロードミラーを見たが被告車は確認できず、さらに同交差点手前で一時停止して右方を確認したもののコンクリート塀と電柱のため右方約一一・三メートルしか確認できなかつたが、それ以上の確認をすることなく、徐行しながら約二・三メートル同交差点に進入し、そこで初めて被告車が右方八・三メートルに接近進行してくるのを認めたので、急ぎブレーキをふんだが及ばず、約一・一メートル進行した地点で被告車と衝突してしまつた。

7  原告は右事故により、右胸部切創、右第六ないし第一二肋骨骨折、外傷性血胸の傷害を負うた。

右の事実によれば、被告には本件交差点に進入するに際し、制限速度を一〇ないし二〇キロメートル超過して走行し、かつ、ロードミラーによる左方確認をせずに漫然と走行した過失があるものというべく、また被告は、被告車を使用する権利を有する運行供用者と認められるから、自賠法三条及び民法七〇九条により、本件事故によつて原告が被つた損害を賠償する責任がある。

三  次に損害について検討する。

1  療養費について

(一)  入院治療費 金六七万四、一二六円

甲第七ないし第一一号証によれば、原告は本件事故により、昭和五六年八月一日から同年一一月二八日までの間、医療法人昭圭会伊藤病院に入院して治療を受け、その入院治療費(診断書、明細書料をも含む)合計は、金六七万四、一二六円であることが認められ、これを覆すに足る証拠はない。

(二)  入院雑費 金一二万円

甲第七ないし第一〇号証によれば、原告は本件事故により一二〇日間入院したことが認められ、その入院雑費は一日金一、〇〇〇円が相当であるから、合計は金一二万円となり、これを覆すに足る証拠はない。

(三)  附添看護料 金五万六、〇〇〇円

甲第一二号証によれば、右入院中一六日間附添看護を要し、原告の妻がその附添をしたことが認められ、その看護料は一日金三、五〇〇円が相当であるから、合計は金五万六、〇〇〇円となり、これを覆すに足る証拠はない。

(四)  通院治療費 金三万五、〇八〇円

甲第一一号証によれば、原告はその後大阪赤十字病院へ通院し、その治療費(診断書料なども含む)は金三万五、〇八〇円であることが認められ、これを覆すに足る証拠はない。以上(一)ないし(四)を合計すると、療養費は金八八万五、二〇六円となる。

2  将来の逸失利益について

甲第一三ないし第二〇号証、第二三号証、乙第三号証、証人住本義男の証言、及び原告本人尋問(第一、第二回)の結果を総合すれば次の(一)ないし(五)の事実が認められ、これを覆すに足る証拠はない。

(一)  原告は、以前、釣竿製造を業とし、その後食肉販売業をしていたが業績が思わしくなく、昭和五六年二月頃、知人の住本義男から牛乳販売業の経営委任を受け、牛乳等の宅配と兵庫県庁内での牛乳等の販売をしていたが、同年五月から七月までの三ケ月分の営業収益(荒利)は、宅配分が金七三万三、〇七七円、県庁分が金六四万九、七六一円であり、合計金一三八万二、八三八円であるから、月平均は金四六万〇、九四六円となる。

(二)  この牛乳販売の仕事は、午前二時に起き、午前二時半頃から六時頃まで宅配し、午前七時半頃から県庁へ出向き、一二時前まで販売をし、その後空瓶の整理などをして帰宅し、仮眠をとつた後、午後三時頃から集金や伝票の整理をするという激務であるうえ、牛乳瓶などの重い物を持つ重労働であり、休むと得意先を失うこともあつて一日も休むことができないものであつた。

(三)  しかるに、原告が本件事故により約四ケ月間入院したため、原告の有していた前記牛乳販売業の経営を住本義男に返さざるをえなくなり、右住本が県庁での販売権を三原正威に譲渡したことと、原告が重労働ができなくなつたこともあつて、原告が病院から退院してからは、原告は別の仕事を探すこととなつた。

(四)  原告は、退院後しばらくは自宅療養をしていたが、その後昭和五七年一月から大工道具の卸の仕事を始め、同年四月からは株式会社栞原商店に勤務し、昭和五七年六月分の給料は基本給が金二〇万円、手取りが金一八万七、六三六円であり、昭和五八年一二月当時の手取りは金二〇万円弱であり賞与は、昭和五七年七月が一ケ月分足らず、同年一二月は一ケ月分、昭和五八年一二月は二ケ月半分ないし三ケ月分であつた。

(五)  原告は、昭和五七年二月一二日に症状固定と診断され、後遺障害等級一四級一〇号と認定される右胸背部から腰部にかけての自発痛、筋緊痛が残り、重労働は無理である。

右(一)の事実からすれば本件事故前の原告の営業収入は月平均四六万円弱という計算になるが、その基礎となつたのは一年間の収入ではなくして、五月ないし七月という比較的暑い時期の収入であることから考えると、原告の営業収入は月平均四〇万円と認めるのが相当である。

また右(三)の事実からすれば、原告が桒原商店に勤務して以後の月収(賞与分も含む)は、その後の昇給等による増加分をも勘案すると、金二三万円と認めるのが相当である。

従つて、原告の本件事故による減収は、月金一七万円となるなお、原告が栞原商店に勤務するまでの昭和五七年一月から三月までの間の収入は不明であるが、生活を維持する程度の収入はあつたものと推認されるから、この間の収入減は逸失利益の問題として処理すべく、従つて原告の被つた休業損害は、本件事故当日から昭和五六年一二月までの五ケ月分の金二〇〇万円となる。

400,000円×5=2,000,000円

また、将来の逸失利益は、収入減が前記のとおり月平均金一七万円であり、その期間は、牛乳販売の仕事が前記のとおりかなりの激務であることからして、昭和五七年一月から昭和六六年一二月(四四歳から五三歳)までの一〇年間と認めるのが相当である。

よつて原告の被つた将来の逸失利益は金一、六二〇万七、八〇〇円となる。

170,000円×12×7.945=16,207,800円

(新ホフマン係数)

3  慰謝料 金一二〇万円

原告は本件事故により前記傷害を負い、入院四ケ月の治療とその後の自宅療養及び転職を余儀なくされ、前記後遺症に悩まされていることなどを総合考慮すれば、慰藉料は金一二〇万円とするのが相当である。

以上1ないし3の損害金を合計すれば金一、九四〇万七、八〇〇円となる。

四  そこで過失相殺について検討する。

前記認定の事実によれば、本件事故については、被告に過失のあることはもとよりであるが、原告においても、一時停止義務違反の過失があり、被告車の優先通行権を妨害したことが明らかである。

すなわち、一時停止の規則は交差点内における事故を防止するためのものであるから、交差点の手前で一時停止をすればそれで足るというものではなく、一時停止をして左右の安全を確認し、左右道路の車両の進行を妨げるおそれがないことを見届けてから同交差点に進入すべきものであるところ、原告は一時停止した地点では右方約一一・三メートルしか確認できなかつたにもかゝわらず、またその際再びロードミラーを見て右方の再確認をしなかつたにもかゝわらず、漫然と同交差点に進入しており、しかもその後も発進と一旦停止をくり返して徐々に同交差点に入り、右方が肉眼で十分確認できる地点において一時停止し、右方の安全を確認するなどの措置をとることなく、右方が十分確認できる地点を通過してから後に始めて被告車に気づいているものであつて、その後も約一・一メートル交差点内に進入して衝突していることからしても、原告において一時停止義務を確実に履行したとは言い難く、原告が右一時停止義務に違反して被告の優先通行権を妨害した過失は重大であり、被告車に前記のような過失があることなどを考え合わせると、その責任の割合は、原告車が六五パーセント、被告車が三五パーセントとみられるから、原告の損害に六五パーセントの過失相殺をするのが相当である。

その結果被告において賠償すべき金額は金六七九万二、七三〇円となる。

19,407,800円×(1-65/100)=6,792,730円

五  損害の填補

しかるに原告が、富士火災海上保険株式会社から金一二〇万円の支払を受けたことは当事者間に争いがなく、これ以外に治療費として金七〇万九、二〇六円の支払を受けていることは原告の明らかに争わないところであるから、以上合計一九〇万九、二〇六円を前記損害額から控除すると、金四八八万三、五二四円となる。

六  弁護士費用 金四九万円

本件事案の難易、審理経過、認容額等に鑑み、弁護士費用は金四九万円とするのが相当である。

七  結果

以上の次第であつて、原告の本訴請求は、以上合計金五三七万三、五二四円及びこれに対する本件事故発生日である昭和五六年八月一日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行の宣言について同法一九六条一項を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 寺田幸雄)

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